突然ですが、あなたは「ブレイクアウェイ」という言葉を知っていますか?
ブレイクアウェイとは、直訳すると「離脱」という意味。
GKがゴールを離れて(飛び出して)、相手の攻撃を遮断するプレーのことを指します。
例えば、GKと相手選手との1vs1や、DFラインの背後に出たスルーパスをGKが処理するようなプレーのことをブレイクアウェイと呼びます。
ちなみに、このブレイクアウェイですが、苦手なGKが多いのが事実。
というのも、前方へ飛び出すようなプレーは、「そもそも飛び出した方が良いのか」「飛び出すとしたらどんな技術を使えばいいのか」など、判断する要素が多いからです。
今回はそんな、ブレイクアウェイを成功させるポイントをお伝えします。
この記事がキッカケで、あなたがチームの絶体絶命のピンチを救えるようになると幸いです。
それではまいりましょう!
この記事の目次
GKの基本用語「ブレイクアウェイ」とは
冒頭でもお伝えしたように、ブレイクアウェイとは、ゴールから離れて相手の攻撃を遮断すること。
例えば、次のようなプレーがブレイクアウェイに該当します。
DFライン背後のスペースに流れてきたボールのクリア
1vs1の際の飛び出し
ここからはそんな、ブレイクアウェイを成功させるための心構えや練習方法をお伝えします。
ブレイクアウェイを成功させるためにGKが持っておくべき心構えとは
ところで、あなたは相手選手との1vs1や、ペナルティエリア外への飛び出しなどのブレイクアウェイは得意ですか?
もしかすると、相手選手との接触などに、恐怖を感じている選手も多いのではないでしょうか。
そんなあなたがブレイクウェイを成功させるために知っておいて欲しい考え方があります。
それは、相手選手との1vs1などのブレイクアウェイの場面は、「絶体絶命のピンチ」ではなく「GKがヒーローになるチャンスである」ということ。
例えば、下記の図のように、DFラインが完全に突破されたような状況は、一般的にはチームのピンチです。
しかし、「ピンチだ、ピンチだ!」と焦っても物ごとは良い方向には流れません。
やはり、GKの仕事は味方のピンチを救うこと。
であれば、DFラインが突破されたこの状況をピンチと捉えるのではなく、「ヒーローになるチャンスだ」と捉え、この状況を楽しむようにしましょう。
ちなみに、心の底から「ピンチではなくヒーローになるチャンスだ!」と捉えられるようになると、GKは選手として一気に成長できます。
僕がこれまで指導してきたGKたちも、ブレイクアウェイに対する考え方がポジティブに変わった瞬間に、全国大会などの大舞台で活躍できるようになりました。
ブレイクアウェイで抑えるべきポイント(キーファクター)
ブレイクアウェイに対する心構えが分かったら、ブレイクアウェイを成功させるための具体的なポイント(キーファクター)を理解するステップです。
下記のキーファクターを抑え、ブレイクウェイを成功させましょう。
●ブレイクアウェイのキーファクター
- スターティングポジション
- 基本姿勢
- 優先順位の理解
- ステイorアプローチの決断
- 声「キーパー!」「クリア!」
- プレーの判断
それぞれ詳しく解説いたします。
スターティングポジション
ブレイクアウェイを成功させるために意識すること、ひとつ目はスターティングポジションです。
スターティングポジションとは文字通り、GKがプレーを始める前の立ち位置のこと。
ブレイクウェイの状況下では、その状況になる前の段階から正しいポジションをとっておく必要があります。
例えば、1vs1になってから慌ててポジションを取るのではなく、事前にスルーパスを出した選手に対してポジションをとっておきましょう。
ちなみに、ブレイクアウェイのスターティングポジションでは、下記の点を満たしたポジションを取るようにしてみてください。
●正しいスターティングポジション
- 直接シュートを打たれても大丈夫
- DFラインの背後を十分にカバーできる
上記のようなポジションを取ることで、DFラインの背後への飛び出しだけでなく、ロングシュートにも対応することができます。
基本姿勢
続いてお伝えするのが、「基本姿勢」です。
ブレイクアウェイの状況下では、スルーパスなどの決定的なパスが出る前の「構え」も大切になります。
例えば、一般的にシュートに対する構えは次の通りです。
しかし、ブレイクアウェイの状況下では、シュートだけでなく前方への飛び出しも行う必要があります。
そのため、下記のように「前後への動き出しがしやすい構え」を作っておくと良いでしょう。
また、ボール保持者がゴールに近寄れば近寄るほど、DFライン背後のスペースは狭くなるので、直接シュートに対する構えを優先すると良いでしょう。
優先順位の理解
続いてお伝えするのが、「優先順位の理解」です。
ブレイクウェイの状況下でよくある失敗として、下記のようなものがあります。
上記は、DFラインの背後にスルーパスが出ると思ってGKが飛び出したところ、相手選手が直接シュートを打ってきた状況です。
特に中学生年代で起こりうるミスです。
基本的に、GKが守るべきものの優先順位は、「第一に守るべきがゴール」。
「その次にDFラインの背後のスペース」です。
ですのでまず、GKは前方に飛び出すことよりも、直接シュートに対して心と体の準備をしておく必要があります。
その上で、直接シュートがない(スルーパスが蹴られる)と分かってから、飛び出すことができるのです。
ブレイクウェイを成功させるためには、このような「優先順位の理解」も心がけましょう。
ステイorアプローチの決断
続いてお伝えするのが、「ステイorアプローチの決断」です。
ここからは相手ボール保持者が、スルーパスなどの決定的なパスを出した後の話になります。
ここでGKが真っ先にするべきことは、飛び出すのかDFに任せるのかの判断です。
例えば、下記のようにDFラインの背後にパスが出ても、相手選手が来ており、DFが対応したほうがよい場合は、DFに任せた方が良いでしょう。
一方、下記のようにDFが間に合わない、なおかつGKが相手よりも先に触れる場合は、GKが飛び出して処理した方が良いでしょう。
相手選手や自分の立ち位置・能力、味方の位置などを踏まえた上で、「ステイorアプローチの決断」をするようにしましょう。
ちなみに、小学生や中学生年代の試合を見ていると、DFが「キーパー出ろよ!」と声をかけることがあります。
しかし、「コーチングのやり方とポイント」の記事でもお伝えしているように、GKが出るか出ないかを決めるのはGK自身です。
「すべてはGK自身が決める」
このことを念頭に置いて、判断・決断するようにしましょう。
声「キーパー!」「クリア!」
続いてお伝えするのが、「声」です。
GKが飛び出すのか、それとも味方に任せるのか決断したら、味方に対してそのことを伝えましょう。
具体的には、下記の通りです。
- GKが飛び出す場合
「キーパー!」の声をかけ、味方に相手選手をブロックしてもらう。または、ゴールのカバーをしてもらう。 - DFに任せる場合
「クリア!」「フリー!」「ターン!(前向け!)」など、DFにどのように動いて欲しいのかを的確に伝える。
ちなみに、味方に対して声をかけるときは、その内容をなるべく早く味方に伝えるようにしましょう。
というのも、GKがプレーするギリギリになって声をかけると、味方はプレーしにくいからです。
例えば、味方選手がボールをクリアしようと振りかぶったときに、GKが「キーパー!」と声をかけても、味方はとっさに判断を切り替えることはできません。
味方が余裕を持ってプレーできるよう、できる限り早いタイミングで声をかけるようにしましょう。
ちなみに、GKのコーチングのやり方については、「GKのコーチングのやり方とポイント」の記事で解説しています。
こちらも合わせてお読みください。
プレーの判断
続いてお伝えするのが、プレーの判断です。
プレーの判断とは、具体的にGKがどんな技術を使ってプレーするのかを決める作業のことになります。
例えば、DFラインの背後に蹴られたスルーパスに対して、GKは「キーパー!」と声をかけ飛び出します。
その後、次のようなプレーの判断ができるでしょう。
- GKの方が先に触れそうなとき
フロントダイビングなどの技術を使ってインターセプトを行う。 - 相手選手とGKが同じタイミングでボールに触れそうなとき
フロントダイビングやスターセーブなどを使って、シュートをブロックする - 相手選手の方が明らかに先に触れそうなとき
相手選手の1stタッチに合わせて低く構え、コラプシングなどの技術を使って至近距離からのシュートをストップする - 相手選手がドリブルでGKを抜こうとしたとき
安易に飛び込まずにできる限り低い姿勢で相手選手についていく。スキがあればフロントダイビングなどの技術を使ってマイボールにする。
このように、相手選手とGKとの距離感や、相手選手の出方によって、GKはプレーの判断を切り替える必要があります。
その場その場に合わせた最適な判断をするようにしましょう。
ちなみに、プレーの判断をするためには、その判断の元となる選択肢(技術)が必要です。
下記の記事では、GKと相手選手の1vs1において重要視される技術を詳しく紹介しています。
お時間ある時にぜひ読んでみてください。
ブレイクアウェイの練習メニュー3選
最後に、GKがブレイクアウェイを成功させるための練習方法をご紹介します。
ここまでお伝えしたキーファクターを抑え、ぜひ自分のものにしてくださいね。
●ブレイクアウェイの練習メニュー
- ゴールとスペースを同時に守る
- 1vs1
- 3vs1+GK
それぞれ詳しく解説いたします。
ゴールとスペースを同時に守る
●このトレーニングのポイント
- ふたつのゴール両方を守れるスターティングポジションを取る
- 前後に素早く動き出せる姿勢を作る
- 先に動かず、蹴られたボールに対して反応する
- 飛び出す場合、声「キーパー!」を素早く大きなボリュームで
- 直接シュートの場合、クロスステップで後ろへ下がる
このレーニングでは、キッカーがGKの前方のコーンゴールまたは、ゴールを目掛けてボールを蹴ります。
GKはコーンゴール・ゴールを破られないようプレーしましょう。
ちなみに、キッカーがコーンゴールに対してボールを蹴るときは、ゴロの軌道になるようにしてくださいね。
1vs1
●このトレーニングのポイント
- ピンチではなくヒーローになるチャンスと捉える
- コーチから出るボールの距離感に応じて、フロントダイビング・ブロッキングで行くのか、アプローチして構えるのか判断する
- 簡単に飛び込んでかわされるのではなく、じっくり着いていきボールを奪うスキを伺う
このトレーニングはGKと相手選手の1vs1です。
ボール保持者がFWの選手の目の前にボールを転がしたら1vs1スタートです。
制限時間は5秒。
それまでにフィールドプレイヤーの選手はゴールを割るようにしましょう。
3vs1+GK
●このトレーニングのポイント
- ピンチではなくヒーローになるチャンスと捉える
- DFと連携を行いならが自分が有利な状況を作る
- パスに対して飛び出すのか、DFに任せるのか判断する
- 相手選手の1stタッチの瞬間にはどこにでも動ける構えを作っておく
- 飛び出す場合は声「キーパー!」を味方に伝える
- フロントダイビングやコラプシングなどのテクニックを用いる
- プレー中に上手くいかないことがあったら、プレーが切れた時に味方とコミュニケーションを取る
こちらのトレーニングは、先ほどのトレーニングより実践に近づけた形式となります。
フィールドプレイヤーの選手は黄色の枠線の中でプレーをするように設定しましょう。
自分自身の準備やプレーはもちろんのこと、味方と連携して「打たせない」ためのコーチングも行ってみてください。
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